遺言Q&A
「遺言が複数あるときの対応」(ラジオ放送)
(質問)
亡くなった父は、自筆証書の遺言を2通作成していました。どう対応したらよいでしょうか。
(回答)
1 遺言は、自己の財産を死後どのように処分するかを生前に定めておくものですが、一旦遺言を作成しても、その後気が変わることもありますので、遺言は、その後事由に変更したり、撤回したりすることができます。従って、同じ人が、2通以上の遺言を書いていたということは決して珍しいことではありません。
2 遺言が複数あるときは、まずそれぞれの遺言が法律上の要件を満たしていることが必要であり、自筆証書遺言の場合には、全文、日付がその方によって自書され、署名押印されていることが必要です。そのような遺言が複数あるときは、まず、遺言の内容が相互に矛盾するものか否かを検討する必要があります。矛盾しない場合には、双方とも有効であり、それぞれの記載に従ってその内容を執行する必要があります。例えば、最初の遺言では、不動産について書いてあり、2通者遺言には、預貯金について書いてある場合には、両者は矛盾しませんから、それぞれの内容を実現すれば足ります。
3 これに対し、相互の内容が矛盾している場合には、問題となります。例えば、最初の遺言で不動産を長男に相続させるとしておいて、2通目の遺言で同一の不動産を長女に相続させると書いてある場合には、その内容が矛盾してきますから、両遺言を執行することが不可能な事態となります。このような場合への対応として、民法は、「前の遺言と後の遺言が抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で撤回したものとみなす」と定めています(1023条1項)。従って、先ほどの例のように不動産の処分内容が矛盾しているときは、後の遺言に従って、不動産は、長女の方に相続されることになります。
4 なお、既に遺言を作成されている方が遺言内容を変更したい場合には、先の遺言を撤回して、新たな遺言を作成すると良いでしょう。その場合、遺言の撤回は、遺言の方式に従ってしなければならないことに注意しておく必要があります。
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