相続の権利(遺留分)を兄に侵害されました。回復することはできますか?

Q.
私の父は、先般死亡しましたが、兄が亡父の遺言を保管していたことが分かり、それを見せてもらったところ、亡父は遺産(不動産・預貯金)をすべて兄に相続させるとしております。母は既に死亡し、兄弟は、私と兄だけです。私は、父の遺産から何も取得できないのでしょうか。

 

A.

遺言は、自己の所有する財産(不動産、預貯金など)を死後どのように処分するかを予め定めておくものであり、財産の処分内容をどのようにするかは原則として遺言者の自由です。しかしながら、仮に遺言が作成されていない場合には、相続人は民法の定める相続分を取得するはずですから、このような相続人が、遺言によって全く財産を取得しないとするのも不合理です。そこで、民法は、遺言者の財産処分の自由を認めつつ、遺言によっても、侵害することのできない相続人の権利として「遺留分」を認めています。

 


遺留分は、相続人が被相続人の兄弟姉妹である場合には認められていませんが、相続人が、直系尊属のみであるときは、相続財産の3分の1、それ以外のときは、相続財産の2分の1とされています(民法第1028条)。本問においては、被相続人の子2人が相続人ですから、遺留分は、相続財産の2分の1であり、それについてのあなたの相続分2分の1を乗じた4分の1があなたの遺留分となり、本問の遺言は、あなたの遺留分4分の1を侵害していることになります。

 


このように遺留分を侵害した遺言は、当然に無効になるものではなく、遺留分を侵害されている相続人が、遺留分を回復するための請求をしなければなりません。これが、遺留分減殺請求権の行使であり、相続の開始及び減殺の対象となる遺贈等を知ってから1年以内で、かつ相続開始から10年以内に行使しなければなりません。(民法第1042条)。この期間内であれば、あなたは、遺留分減殺請求権を行使することによって、相続財産の4分の1に相当する財産を取得することができます。

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