遺言Q&A
遺言と死因贈与とは、どのような違いがあるのでしょうか
Q
自分の財産を自分が死んだときに予め自分が決めた人に引き継ぐ方法として、「遺言」のほかに、「死因贈与」という方法があると
聞きました。遺言と死因贈与とは、どのような違いがあるのでしょうか。
A
1 遺言も死因贈与も、自分が死んだときに、予め自分が決めた人に、自分の財産を引き継ぐという効果を生じさせる行為であり、そ
の意味では類似していますが、違う点もあります。
2 遺言は、財産を渡す人だけの一方的な意思表示により行うものであり、予め財産を受け取る人の承諾を得ておく必要はありませ
ん。
これに対し、死因贈与は、財産を渡す人と財産を受け取る人が合意して行う契約であり、財産を受け取る人の承諾を得なけれ
ば、死因贈与契約を成立させることができません。
3 また、遺言は、民法で遺言の方式が定められており、その方式によらなければ、遺言は無効になってしまいます。
自筆証書遺言では、原則として、遺言者が、書面に、遺言書の全文、日付、氏名を自ら手書きで記載(自書)したうえで、押印し
て作成する必要があります。
公正証書遺言では、原則として、遺言者が、証人2名以上の立会いの下で、遺言の趣旨を公証人に直接口頭で伝えたうえで、公証
人が、これを筆記し、遺言者と証人に読み聞かせて、遺言者・証人・公証人が署名・押印した公正証書により作成する必要がありま
す。
これに対し、死因贈与は、特にその方式に定めはなく、口頭でも死因贈与契約を成立させることは可能ですので、必ずしも書面で
行わなければならないというわけではありません。
死因贈与の場合、方式の定めはないため、遺言と比べて、方式違反により無効となる可能性は低いと言えます。
もっとも、死因贈与についても、契約の成立や内容について後々トラブルになることを防ぐためには、自書ではなく、パソコン
入力でも構いませんが、最低限、書面で作成しておく必要はあり、実印を使用し、印鑑登録証明書を添付しておくのがよいでしょ
う。
4 遺言を行うには、遺言能力が必要とされていますが、遺言能力は、遺言の内容を理解し、遺言により生じる結果が分かればよく、
財産関係についての契約を行うよりも低い能力で足りるとされています。
例えば、未成年者であっても、満15歳以上であれば、法定代理人の同意なく、単独で有効に遺言ができるとされています。
これに対し、死因贈与は、契約であり、少なくとも財産を渡す方は、通常の財産関係についての契約を行うのに必要とされる能力が
必要となります。
5 遺言は、いつでも撤回ができ、書き直しが自由です。
これに対し、死因贈与についても、基本的には、いつでも撤回ができるとされています。
もっとも、贈与を受けた人が、贈与を受ける代わりに、贈与した人の生活の面倒を見る等の義務を負うという「負担付き死因贈
与」である場合において、贈与を受けた人がその義務の全部又はそれに類する程度の履行をしたときには、死因贈与の撤回が認めら
れないことがあり得ます。
6 相続人の遺留分を侵害するような遺言や死因贈与は、いずれも遺留分減殺の対象となり、遺留分を侵害する限度で効力を失います
ので、この点では、遺言も死因贈与も同じです。
もっとも、遺留分減殺の順序としては、まず、遺贈(遺言により第三者に財産を与える行為)を減殺したうえで、それでも遺留分
の回復ができない場合に、死因贈与を減殺するという順序となります。
7 遺贈と死因贈与では、財産の中に土地や建物といった不動産がある場合に生じる税金、すなわち、不動産の登記を行うときに課さ
れる登録免許税や、不動産を取得したときに課される不動産取得税にも違いがあります。
8 このように、遺言と死因贈与は似た機能を有していますが、それぞれ異なる点がありますので、どちらで行うかについては弁護士
等の専門家にご相談頂きたいと思います。
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