相続・遺言(専門)
遺産分割の注意点
遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議書には決まった書式(書き方)はありませんが、いくつか注意点があります。
1.必ず法定相続人全員で協議しなければなりません。
戸籍調査の上、法定相続人に過不足がないようにする必要があります。
※全員の協議ですが、全員が合意した事実があればそれでよく、全員が一堂に会して協議する事までは要求されません。
現実的には、1通の遺産分割協議書(案)を作成し、他の相続人に、内容に合意できれば実印を押してもらう方法がよく取られます。
2.法定相続人全員が、署名・実印の押印をする
印鑑は実印でなければ不動産登記や銀行手続が出来ません。
3.財産の表示方法に注意
不動産の所在地や家屋表示等は、住所(住居表示)ではなく登記簿どおりの表記にしなければなりません。
預金等の表示については、銀行名だけでなく、支店名・口座番号まで表示して、預金の特定をする必要があります。
4.割り印が必要
遺産分割協議書が用紙数枚にわたる場合、法定相続人全員の実印で契印(割り印)してください。
5.印鑑登録証明書の添付
遺産分割協議書には、実印の押印が必要ですが、それと共に印鑑登録証明書も添付してください。
以上が、遺産分割協議書を書く上での基本的なポイントとなります。
最後に、最近よくある法的な判断を必要とするケースについてお伝えしたいと思います。
相続人が未成年である場合
未成年者は、判断能力の問題から、遺産分割協議に参加することが出来ません。
よって、相続人の中に未成年者がいる場合、下記の2つの方法のうちどちらかを選択することになります。
1)未成年者が成年に達するまで待ってから遺産分割協議をする
2)未成年者の代理人が遺産分割協議をする
後者の場合、親権者である親が未成年の子の代理人となるのが通常ですが、実際の相続では子と親とが揃って相続人となるケースが多く存在します。
このような場合、親と子供の利益が対立し、未成年者の利益が守られないおそれがあるため、親は子供の代理人として遺産分割協議をすることが出来ません。
また、親は相続人ではなく、子供だけが相続人である場合であっても、数人の子供を一人の親がまとめて代理することもできません。
このようなときには、未成年者一人一人のために特別代理人を選任します。
特別代理人は家庭裁判所に選任を申し立てます。
相続人でない親族を特別代理人とする申し立ても可能です。
実際の手続では、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てるときに、遺産分割協議書(案)の添付が必要になります。
相続人に行方不明者がいる時
相続人の中に行方不明者がいる場合には、次の2つの方法が考えられます。
1)失踪宣告を待って、遺産分割協議をする
失踪宣告には特別失踪(戦災、船舶の沈没、災害等の特別の危難に遭った場合の失踪)と普通失踪(特別失踪に該当する原因がない通常の失踪)があり、特別失踪の場合は危難が去ってから1年間、普通失踪の場合は7年間生死不明であれば、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。
失踪宣告がなされると、行方不明者は、特別失踪においては危難が去った時、普通失踪においては7年の期間が満了した時にそれぞれ死亡したものとみなされますので、その時期に応じて代襲相続等の検討をして相続人を確定し、それらの相続人によって遺産分割協議を行います。
2)不在者のための財産管理人の選任を申し立て、選任された財産管理人を交えて遺産分割協議をする
相続人の中に認知症で協議できない者がいる場合
成年後見人の選任を家庭裁判所に申し立て、その成年後見人を交えて遺産分割協議をすることになります。
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